黒字倒産はなぜ起こる?事業者が知っておきたい資金ショートのリスクと対策
「利益が出ているのに手元の現金が足りない」「支払いに追われて資金繰りが厳しい」、このような状況に心当たりがある経営者も少なくないでしょう。倒産は赤字企業だけの問題ではなく黒字企業にも関わる問題であることを認識し、早めに予防策を打っておかなくてはなりません。
ここで黒字倒産が起こる原因や対策を解説していきますので、ご一読ください。
黒字倒産とは利益があっても現金がない状態
「黒字倒産」とは、会計上では利益を計上できているにもかかわらず手元の現金が不足し、債務の支払いができず結果的に倒産に至ってしまう現象を指します。
黒字を示していても実際の現金の流れであるキャッシュフローが悪化することで発生するケースが多く、次のような状況に該当するなら黒字倒産のリスクが高いといえるでしょう。
- 売掛金の回収時期が平均的な期間より大幅に長い
- 在庫の回転率が業界平均を大きく下回っている
- 借入金の返済負担が売上に対して重い
- 手元資金が月商に比べて極端に少ない
- 売上は増加しているが現金残高が減少し続けている など
このように「利益は出ているが現金がない」という状態が続くと、やがて支払い能力を失い、倒産に追い込まれてしまうのです。特に成長期の企業や季節変動の大きい業界では、このリスクが高まる傾向にあります。
黒字倒産が発生する主な原因
黒字倒産には複数の要因が絡み合っていることが多く、予防を目指すにはまずその原因を把握することが重要といえます。
各社各様の実情があるかと思いますが、一般的な傾向としては以下が黒字倒産を引き起こす要因となっています。
- 設備投資による資金不足
- 取引先の倒産・貸し倒れ
- 借入金返済の負担が集中している
- 在庫への過剰な投資
- 後継者不在で継続が困難
各原因について詳しく見ていきましょう。
設備投資による資金不足
事業拡大に伴う設備投資も黒字倒産のトリガーとなることがあります。
工場の増設、新店舗の開設、機械設備の導入などは将来の収益向上を目的としていますが、投資回収までの期間中は大きな資金負担を負うこととなるためです。
特に問題となるのは、設備投資の効果が予想より低い場合や、投資回収期間が想定を上回る場合です。計画通りに売上が伸びず投資した資金の回収が遅れると、運転資金にも影響を与え、全体的な資金繰りが悪化してしまうでしょう。
取引先の倒産・貸し倒れ
取引先の突然の倒産や支払い不能が自社の資金ショートを誘発するケースもあります。特に、特定の大口取引先への依存度が高い企業でそのリスクは大きいです。
売掛金未回収の問題は、単に予定していた入金がなくなるだけでなく、その分をほかの手段で調達する必要が生じるため、影響はより大きなものとなってしまうでしょう。また、連鎖倒産のリスクもあり、直接の取引先でなくとも、業界全体の不況時には複数の取引先で同時多発的に倒産が発生して影響が波及してくることもあります。
信用調査を怠った新規取引先との取引、与信管理が不十分な既存取引先との継続取引は、このリスクを高める要因となります。
借入金返済の負担が集中している
複数の借入金の返済時期が重なったり、短期借入金の借り換えができなかったりすることも、黒字倒産の原因となり得ます。
特に創業期や成長期に複数の金融機関から借入を行ったケースでは、返済スケジュールの管理が複雑化しやすくリスクが高まります。
在庫への過剰な投資
製造業や小売業などでは売上機会を逃さないために十分な在庫を確保したくなるものですが、在庫が過剰となってしまうことで黒字倒産が発生するかもしれません。
特に季節商品を扱う企業だとシーズン前に大量の在庫を仕入れる必要がありますのでリスクは大きいです。また、ライフサイクルが短い製品、流行で左右される商品なども在庫が陳腐化する危険性が高く、結果的に資金の無駄遣いとなる可能性があります。
後継者不在で継続が困難
中小企業では「経営者の高齢化」および「後継者不足」の問題が深刻になっており、これが黒字倒産の原因となるケースもあります。
業績が良く黒字を維持していたとしても、経営者がいなくなってしまっては運営を続けられません。経営者としての立場を引き継いでくれる後継者を見つけられなければ、いつかは黒字倒産を起こしてしまうでしょう。
黒字倒産を防ぐにはどうする?
黒字倒産のリスクを回避するには、売上や利益の向上だけでなく、現金の流れに着目した運営が不可欠です。具体的な予防策として、次の取り組みが挙げられます。
- キャッシュフローの適切な管理
- 多様な資金調達ルートの確保
- 与信管理の強化
- 借入金返済の平準化
以下ではこれらの取り組み内容について紹介していきます。
キャッシュフローの適切な管理
月次、週次などで現金の出入りを適切に管理し、資金不足が発生するタイミングを事前に把握できるようにしましょう。
キャッシュフロー計算書を作成し、営業活動、投資活動、財務活動それぞれの現金の流れを可視化することで、どの分野で現金が不足しているかを特定できます。
また、売掛金の回収状況もモニタリングし、回収遅延の兆候を早期に発見することも大切です。
多様な資金調達ルートの確保
1つの資金調達手段への依存は、黒字倒産のリスクを高めてしまいます。次のように複数の調達手段を準備しておきましょう。
資金調達の手段 | 特徴 |
|---|---|
銀行融資 | ・銀行から返済義務付きで借り入れる方法 ・大口調達可能 ・審査・担保・保証が必要 |
ファクタリング | ・売掛債権を売却する方法 ・迅速な現金化 ・信用力は不問 |
クラウドファンディング | ・インターネット上で多数の支援者から少額ずつ資金を募る方法 ・新規、小規模事業向きでプロモーション効果も望める ・返済不要 |
投資家からの出資 | ・投資家やVC(ベンチャーキャピタル)から株式発行などで資金提供を受ける方法 ・返済不要で経営支援も期待できる |
複数の金融機関との関係性構築も重要です。普段から良好な取引関係を作っておくことでリスクの分散も図れるでしょう。
与信管理の強化
自社がキャッシュフローや回収期間を最適化していても、取引先が突然倒産することで甚大な影響を受けるおそれがあります。
このリスクを軽減するためには与信管理を徹底しましょう。この観点からは以下がポイントとなります。
- 単一の取引先へ集中することを避ける
- 地域的な極端な偏りも避ける
- 契約期間をずらして更新時期を分散する など
また、新規取引開始時の信用調査はもちろん、既存取引先についても定期的に財務状況のチェックができると良いです。
借入金返済の平準化
新規借入時には、既存借入の返済スケジュールも考慮して、返済時期が重ならないよう調整しましょう。また、長期借入金と短期借入金のバランスを適切に保つことも大切ですし、金利変動リスクを軽減するため固定金利と変動金利の借入をバランスよく組み合わせることも検討すると良いです。
これらさまざまな施策を講じて、常にキャッシュフローを意識した経営を心がけることが黒字倒産のリスク回避につながるでしょう。
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M&Aとは
「M&A」と言われても、まだまだ一般的にはよく知られていないのではないでしょうか?テレビや新聞の経済ニュースでは頻繁に目にするようにはなりましたが、まだまだ何のことやらわからない方が多いかと思います。
あるいは言葉の意味は人から聞いたり、本やネット等でなんとなく知っているが、具体的にどういうことなのか知らない人が多数かと思います。それも当然のことです。なぜなら、金融機関やM&Aを手掛けるコンサルティング会社以外の事業会社にとっては、M&Aというのは企業にとっての一大イベントでありますし、むしろほとんどの企業は全く縁のないことも多いからです。したがって、M&Aが一般的に知られるはずもないのです。
そこで、M&Aとは何なのか、またM&Aにはどのような手法があり、具体的にどのようなことなのかを、わかりやすくご説明したいと思います。
M&Aの正式な名称は「Mergers and Acquisitions」であり、M&Aとはこれを略した言葉です。Mergersというのは「合併」、Acquisitionsというのが「買収」のことであり、直訳すると「企業の合併と買収」となります。
一般的に「M&A」と言うと、二つ以上の会社を一つの会社としてくっつける、専門的に言うと複数の法人格を一つの法人格に結合する合併およびある会社の全株式を買い取ってしまう買収といった狭義のM&Aだけでなく、ある企業の特定の事業だけを譲渡する営業譲渡や、資本提携(100%ではない株式の取得・増資の引受)なども含めた、広義の資本的取引のことを包括しています。
MERIT&DEMERIT
M&Aのメリット・デメリット
売り手のメリット・デメリット
1. 従業員の確保
現在、日本の中小企業においては後継者不在により、いつまで事業が続けられるか悩んでいる中小企業経営者が多いです。後継者不在が続いた場合、廃業に追い込まれる企業も少なくないでしょう。そうなってしまうと、従業員やその家族、取引先に大きな影響を及ぼしてしまいます。こうした中小企業がM&Aを行うことで、会社を存続させることができ、ひいては従業員の雇用を守ることができます。
また、M&Aの相手先によっては、その会社のネットワークやノウハウを利用することで、再スタートを切ることができるので、後継者不在に悩んでいる中小企業にとっては、きわめて有効かつ迅速な解決を図るための選択肢となります。
2. 企業体質の強化につながる
M&Aを実行しようという買い手会社は、売り手会社に比べると、資金力、人材などの事業基盤の面で安定した企業となります。
M&Aで事業基盤のしっかりした企業との確固とした関係を築くことができれば、今まで不足していた信用力が補完され、資金調達が楽になることもありますし、また相手先のネットワークを利用することで販路を拡大することができるなど、いわゆる事業シナジーの活用ができ、収益力の強化につながることが期待できます。
3. 売り手の経済的メリット
たとえば後継者が不在のため、自社を廃業・清算する場合、現金や有価証券といった金融資産以外の資産である在庫や機械設備などは換金することが困難なばかりか、往々にして処分費用が嵩み、会社をたたむのに残金が残るどころか、追加での費用の支払いが出てしまう可能性も高いものです。
しかしながら、M&Aを実行する企業にとっては、そういった在庫や機械設備は今後の事業遂行にとって価値となる資産となるばかりか、場合によっては収益力を評価していわゆるのれん価値をつけて株式を買い取ってくれることがあります。
この場合、廃業・清算にかかる手間が、M&Aで軽減されるばかりか、場合によっては手元に残る現金が多くなることもあり、引退後の生活のために大きなメリットとなることでしょう。
もし詳細がお聞きになりたい方は、当社まで、ぜひお問い合わせください。
買い手側のメリット・デメリット
1. 既存事業の拡大や事業の多角化ができる
経済が成熟してくると、既存事業における市場規模の拡大というのは自然には見込めなくなるものです。したがって、自社の事業領域においては、他社の市場シェアを奪うほか売上の拡大が見込めなくなってきますが、これは簡単な話ではありません。
そこで自社の経営戦略やニーズにマッチした企業とのM&Aを実行することによって、自社の事業規模を拡大し、市場シェアを一気に拡大することが可能となります。
また、自社の既存事業の売上が伸び悩んでいる場合は、他の領域への進出、すなわち事業の多角化、新地域への進出という事業戦略を取ることが多いかと思います。しかしながら、ノウハウがない事業に新規に進出する場合は、よほどの事業シナジーがない限り、失敗のリスクが高くなります。そこで、すでにある他業界の会社をM&Aすることで、対象企業の事業ノウハウばかりかすでに獲得しているマーケット・シェアを獲得することができるというメリットがあります。
2. 時間を買うことができる
M&Aを実行することは、自社で一から経営資源である「ヒト・モノ・カネ」を投入して、新しい事業を立ち上げる時間を省くことができ、お金で「時間を買う」ことができるわけです。
3. 失敗のリスクを軽減できる
一般的に自社の既存事業の売上が伸び悩んでいる場合は、他の領域への進出、すなわち事業の多角化、新地域への進出という事業戦略を取ることが多いかと思います。しかしながら、ノウハウがない事業に新規に進出する場合は、よほどの事業シナジーがない限り、失敗のリスクが高くなります。
そこで、すでにある他業界の会社をM&Aすることで、対象企業の事業ノウハウばかりかすでに獲得しているマーケット・シェアを獲得することが できるというメリットがあります。
OFFICE
会社情報
当社は、会計士および税理士のネットワークをベースに設立された会社です。
これまで、多数のM&Aの経験に裏付けられた専門的ノウハウおよびネットワークを元に顧客企業にとって最適なM&Aを実現することが使命であります。
具体的なサービスとして、最も重要なものは、事業承継及び企業規模の拡大を目指している経営者様にとって、最も効果的なM&Aの相手先を見つけ、ご紹介する仲介業務であります。M&A仲介の難しい点は、なんといっても「相手先企業情報の入手及び両者のマッチング」です。
この仲介業務、すなわち出会いがすべてといっても過言ではありません。他社では、どうしても成約ばかりに目を向けて、成約するならどこでもいい、といったことがありますが、当社はこの仲介業務にもっとも力を入れ、またこの仲介において皆様の事業の発展に尽くしていきたいと考えております。
| 会社名 | 株式会社日本企業評価会計事務所(旧M&Aプロ株式会社) |
|---|---|
| 設立 | 平成28年10月5日 |
| 事業内容 | 企業買収および合併の仲介業務など |
| 住所 | 〒102-0093 東京都千代田区平河町2-8-10 宮川ビル4階 |
| 代表取締役 | 近 暁 |
