税理士目線で廃業をすすめる3つのケースと早期検討の重要性
廃業という決断を最後まで避けたいと考えるのは自然なことです。しかし、廃業の選択肢を初めから除外して経営を続けるべきではありません。廃業を含めさまざまな選択肢を早めに検討することが重要です。
廃業すべきかどうかは各社の状況を見なければ判断できませんが、一般的に廃業をした方が良いといえるケースを取り上げましたのでご一読ください。
ケース1.債務超過の改善が困難なケース
債務超過の状態が長期間続き、改善の見通しが立たない場合は、廃業を検討すべきといえます。
「まだ何とかなる」と考えがちですが、市場の構造的な変化によって売上回復が見込めない場合、競合他社との価格競争で収益性が改善できない場合、主要取引先の離脱により事業基盤が崩壊している場合、そして金融機関からの新規融資が困難な場合、債務超過を解消するのは現実的ではないでしょう。
判断が遅れると破産せざるを得なくなり、取引先や従業員など利害関係者に大きな負担を強いることになるかもしれません。
なお、着目すべきは表面的な数字だけではありません。実際の資産価値は帳簿価格よりも低いこともあり、在庫の陳腐化、設備の実質的価値の低下、売掛金の回収が難しい、などの事情を考慮すると、帳簿上は債務超過でなくても実質的には倒産状態に近いというケースも存在します。
ケース2.後継者不在のまま経営者が高齢化したケース
「経営者の高齢化」および「後継者不在」の問題は、昨今の中小企業が直面する深刻な課題の1つです。
経営者には高いレベルでの思考力や行動力が求められるところ、加齢とともにこれらの能力は低下してしまいますし、健康状態の悪化が経営に悪影響を与えるケースも存在します。入院や通院により現場から離れる時間が増えれば迅速な意思決定ができなくなり、事業機会を逃すリスクも高まってしまうでしょう。経営者個人のマンパワーに依存してしまっている会社だとこのリスクはより顕著です。
一方で、子どもなどに無理に事業承継を迫ることは家族関係の悪化につながりかねません。従業員承継に関しても、中小企業だと経営に必要な資金調達能力や経営スキルを持つ従業員は限られており、現実的な選択肢とならないことが多いのも実情です。
第三者承継(M&A)も選択肢の1つですが、承継先が見つからない場合や、時間的余裕がない場合は廃業も選択肢として考える必要があるでしょう。
3.資金ショートが確実視されるケース
健全な資金繰りは会社が存続する上で生命線ともいえる重要な取り組みです。「黒字倒産」という言葉があるように、利益が出ていても、資金繰りが破綻して資金ショートを起こすことによって事業継続が不可能となるケースもあります。
判断が遅れ運転資金が底を突いた状態が続くと、従業員への給与支払いができず法令違反となるリスクが高まりますし、取引先への支払いができず信頼を失い、強制執行より財産を差し押さえられるリスクも高まります。
特に税金の滞納は深刻な問題です。税務署は一般の債権者よりも強力な徴収権限を持っており、預金の差押えや売掛金の差押えにより事業が突然停止するリスクがより高くなります。社会保険料の滞納に関しても同様です。
このように強制徴収を受けることで資金繰りが急激に悪化する可能性も考慮し、今後の方針について早めに決断を下すことが大切です。
早期の検討が重要な理由
廃業、あるいはそれ以外の道を模索するにしても、検討は早いうちに始めることが大切です。
意思決定を先送りにすることは、市場競争力の低下、従業員のモチベーション低下、経営者に対する不信感など会社に多くのデメリットをもたらします。
反対に、早期に廃業や立て直しを検討することには、さまざまな選択肢を視野に入れることができるというメリットがあります。
税理士も頼り「これまでとは異なるアプローチで資金調達を図る」「時間をかけて買い手または後継者を探す」「すでに債務超過にあるなら民事再生手続きを利用する」など、複数の道から最良の選択をする余地も生まれるでしょう。
廃業をするにしても、早期の着手により、経営状況がより悪化する前に事業を終わらせることができます。債務が膨らんで弁済ができなくなると破産手続きを利用することになりますが、早めに廃業を決断すればそのような事態の回避が可能です。破産すると取引先にも大きな迷惑がかかりますので、廃業は取引先の損害を抑えるという意味でもメリットのある選択といえます。
KNOWLEDGE
当事務所が提供する基礎知識
-
廃業後も税務申告が必...
経営環境の変化や後継者不足など事情はそれぞれ異なるものの、事業の継続が難しくなり廃業する事業者は毎年多数存在し […]
-
M&Aにお...
M&A(企業の合併・買収)は、企業が発展していくための重要な手段として実践されています。しかし、「M& […]
-
LBO(レバレッジド...
レバレッジドバイアウトとは、LBOとも呼ばれる企業買収方法の一つです。通常企業を買収するときには自己資金などで […]
-
企業価値や事業価値と...
「企業価値」と「事業価値」は似た言葉に見えますが、専門用語としての意味は違いますので注意してください。 企業価 […]
-
M&Aとは...
企業の成長や競争力を向上させる手段として、あるいは事業承継の手段として採用されるのが「M&A」です。M […]
-
第三者への売却事業承...
日本企業においては、主に従業員や親族などの近しい存在が後継者になる場合が多くあります。そのような慣習にならうと […]
KEYWORD
よく検索されるキーワード
ABOUT
M&Aとは
「M&A」と言われても、まだまだ一般的にはよく知られていないのではないでしょうか?テレビや新聞の経済ニュースでは頻繁に目にするようにはなりましたが、まだまだ何のことやらわからない方が多いかと思います。
あるいは言葉の意味は人から聞いたり、本やネット等でなんとなく知っているが、具体的にどういうことなのか知らない人が多数かと思います。それも当然のことです。なぜなら、金融機関やM&Aを手掛けるコンサルティング会社以外の事業会社にとっては、M&Aというのは企業にとっての一大イベントでありますし、むしろほとんどの企業は全く縁のないことも多いからです。したがって、M&Aが一般的に知られるはずもないのです。
そこで、M&Aとは何なのか、またM&Aにはどのような手法があり、具体的にどのようなことなのかを、わかりやすくご説明したいと思います。
M&Aの正式な名称は「Mergers and Acquisitions」であり、M&Aとはこれを略した言葉です。Mergersというのは「合併」、Acquisitionsというのが「買収」のことであり、直訳すると「企業の合併と買収」となります。
一般的に「M&A」と言うと、二つ以上の会社を一つの会社としてくっつける、専門的に言うと複数の法人格を一つの法人格に結合する合併およびある会社の全株式を買い取ってしまう買収といった狭義のM&Aだけでなく、ある企業の特定の事業だけを譲渡する営業譲渡や、資本提携(100%ではない株式の取得・増資の引受)なども含めた、広義の資本的取引のことを包括しています。
MERIT&DEMERIT
M&Aのメリット・デメリット
売り手のメリット・デメリット
1. 従業員の確保
現在、日本の中小企業においては後継者不在により、いつまで事業が続けられるか悩んでいる中小企業経営者が多いです。後継者不在が続いた場合、廃業に追い込まれる企業も少なくないでしょう。そうなってしまうと、従業員やその家族、取引先に大きな影響を及ぼしてしまいます。こうした中小企業がM&Aを行うことで、会社を存続させることができ、ひいては従業員の雇用を守ることができます。
また、M&Aの相手先によっては、その会社のネットワークやノウハウを利用することで、再スタートを切ることができるので、後継者不在に悩んでいる中小企業にとっては、きわめて有効かつ迅速な解決を図るための選択肢となります。
2. 企業体質の強化につながる
M&Aを実行しようという買い手会社は、売り手会社に比べると、資金力、人材などの事業基盤の面で安定した企業となります。
M&Aで事業基盤のしっかりした企業との確固とした関係を築くことができれば、今まで不足していた信用力が補完され、資金調達が楽になることもありますし、また相手先のネットワークを利用することで販路を拡大することができるなど、いわゆる事業シナジーの活用ができ、収益力の強化につながることが期待できます。
3. 売り手の経済的メリット
たとえば後継者が不在のため、自社を廃業・清算する場合、現金や有価証券といった金融資産以外の資産である在庫や機械設備などは換金することが困難なばかりか、往々にして処分費用が嵩み、会社をたたむのに残金が残るどころか、追加での費用の支払いが出てしまう可能性も高いものです。
しかしながら、M&Aを実行する企業にとっては、そういった在庫や機械設備は今後の事業遂行にとって価値となる資産となるばかりか、場合によっては収益力を評価していわゆるのれん価値をつけて株式を買い取ってくれることがあります。
この場合、廃業・清算にかかる手間が、M&Aで軽減されるばかりか、場合によっては手元に残る現金が多くなることもあり、引退後の生活のために大きなメリットとなることでしょう。
もし詳細がお聞きになりたい方は、当社まで、ぜひお問い合わせください。

買い手側のメリット・デメリット
1. 既存事業の拡大や事業の多角化ができる
経済が成熟してくると、既存事業における市場規模の拡大というのは自然には見込めなくなるものです。したがって、自社の事業領域においては、他社の市場シェアを奪うほか売上の拡大が見込めなくなってきますが、これは簡単な話ではありません。
そこで自社の経営戦略やニーズにマッチした企業とのM&Aを実行することによって、自社の事業規模を拡大し、市場シェアを一気に拡大することが可能となります。
また、自社の既存事業の売上が伸び悩んでいる場合は、他の領域への進出、すなわち事業の多角化、新地域への進出という事業戦略を取ることが多いかと思います。しかしながら、ノウハウがない事業に新規に進出する場合は、よほどの事業シナジーがない限り、失敗のリスクが高くなります。そこで、すでにある他業界の会社をM&Aすることで、対象企業の事業ノウハウばかりかすでに獲得しているマーケット・シェアを獲得することができるというメリットがあります。

2. 時間を買うことができる
M&Aを実行することは、自社で一から経営資源である「ヒト・モノ・カネ」を投入して、新しい事業を立ち上げる時間を省くことができ、お金で「時間を買う」ことができるわけです。
3. 失敗のリスクを軽減できる
一般的に自社の既存事業の売上が伸び悩んでいる場合は、他の領域への進出、すなわち事業の多角化、新地域への進出という事業戦略を取ることが多いかと思います。しかしながら、ノウハウがない事業に新規に進出する場合は、よほどの事業シナジーがない限り、失敗のリスクが高くなります。
そこで、すでにある他業界の会社をM&Aすることで、対象企業の事業ノウハウばかりかすでに獲得しているマーケット・シェアを獲得することが できるというメリットがあります。
OFFICE
会社情報
当社は、会計士および税理士のネットワークをベースに設立された会社です。
これまで、多数のM&Aの経験に裏付けられた専門的ノウハウおよびネットワークを元に顧客企業にとって最適なM&Aを実現することが使命であります。
具体的なサービスとして、最も重要なものは、事業承継及び企業規模の拡大を目指している経営者様にとって、最も効果的なM&Aの相手先を見つけ、ご紹介する仲介業務であります。M&A仲介の難しい点は、なんといっても「相手先企業情報の入手及び両者のマッチング」です。
この仲介業務、すなわち出会いがすべてといっても過言ではありません。他社では、どうしても成約ばかりに目を向けて、成約するならどこでもいい、といったことがありますが、当社はこの仲介業務にもっとも力を入れ、またこの仲介において皆様の事業の発展に尽くしていきたいと考えております。
会社名 | 株式会社日本企業評価会計事務所(旧M&Aプロ株式会社) |
---|---|
設立 | 平成28年10月5日 |
事業内容 | 企業買収および合併の仲介業務など |
住所 | 〒102-0093 東京都千代田区平河町2-8-10 宮川ビル4階 |
代表取締役 | 近 暁 |