廃業後も税務申告が必要?会社や個人事業主がしなければならない確定申告とは
経営環境の変化や後継者不足など事情はそれぞれ異なるものの、事業の継続が難しくなり廃業する事業者は毎年多数存在します。廃業後は事業活動も停止し、経営者としての役割も終了するのですが、廃業手続きに伴い税務申告が必要であることは覚えておきましょう。
特に法人の場合は手続きが複雑です。
廃業手続き一連の流れ
一般的に、会社が廃業をするときは次のような流れに沿って手続きを進めていくことになります。
- 株主総会で解散、清算人選任の決議を行う
- 出席株主の議決権の2/3以上を要する「特別決議」が必要。
- 解散と清算人選任を同時に行う。
- 2週間以内に解散の登記・清算人就任の登記を行う
- 官報公告と債権者保護手続きを実施する
- 債権者に対し1ヶ月以上の異議申し立て期間を設ける必要がある。
- 資産の換価・債務の弁済を行い、残余財産を確定させる
- 換価や弁済を行うのは清算人の仕事。
- 解散事業年度に係る税務申告を行う
- 清算確定申告を行う
- 清算結了登記を行い、法人格が消滅する
一方で個人事業主の場合は会社のように「解散」や「清算」の概念がありません。事業を終えたことを、税務署や都道府県・市区町村へ届出(廃業届の提出)するだけです。その後確定申告が必要である点は法人同様ですが、この確定申告に関しても特別なものではなく、例年どおり翌年2月16日~3月15日に確定申告を行います。
※廃業届の提出は原則として廃業から1ヶ月以内に行う。
廃業した年の申告は必要
会社が解散をしても、それは営業停止宣言に過ぎず、その後も清算会社としてしばらく存続します。そして清算期間中にも決算と申告が不可欠です。
税務申告に関しては「解散確定申告」と「清算確定申告」の2つが必要で、解散から清算結了までの期間が1年以上におよぶときは中間申告も行うことになります。
- 解散確定申告
- 解散日翌日から2ヶ月以内に行う
- 会社の期首から解散日までの期間に対して行う
- 清算確定申告
- 残余財産が確定した日(清算結了日)の翌日から1ヶ月以内に行う
- 解散日翌日から清算結了日までの期間で申告する
個人事業主の場合は、これまで通り一定以上の黒字(所得税の基礎控除額である48万円が1つの目安)があるときに申告を行います。赤字の場合は申告不要ですが、還付金が得られるケースなどでは申告をした方が良いでしょう。
確定申告を怠るリスク
「もう事業をやめたのだから申告する必要はないだろう」と申告義務に対応せず放置していると、次のようなペナルティを受ける危険性があります。
- 無申告加算税(原則は15%、納税額50万円超の部分に対しては20~30%へ加重。ただし税務署から指摘を受ける前に対処すれば軽減される制度あり)
- 重加算税(故意の隠蔽や仮装をしたときは35%、無申告なら40%)
- 延滞税(年3%または特例基準+1%、期限から2ヶ月後以降は14.6%または+7.3%。実際の適用利率は変動するため国税庁HPを要チェック)
- 脱税など特に悪質なケースでは刑事罰(拘禁刑または罰金刑)
会社の場合は最終的に法人格が消滅しますが、個人事業主は個人の責任となりますので特にリスクが大きいと考えられます。
廃業に関するよくある疑問
最後に、廃業や廃業時の税務申告に関してよく抱く疑問、不安について紹介します。
- 廃業費用は経費に計上できる?
→ 廃業後、清算中に発生したコストに関しては原則として清算期間における損金として処理可能。個人事業の場合も、所得税法の「事業を廃止した場合の必要経費の特例」により廃業年度の経費として認められることが多い。 - 法人格が消えると税金の支払い義務も消える?
→ 清算結了で請求先がなくなれば事実上徴収不能になるが、結了までの税負債は会社財産をもって納付すべき法的義務を負う。ただし経営者による横領などの行為があったときは当該個人に一定の範囲で支払い義務が課される。 - 清算中に資金不足で税金を払えないときは?
→ 清算人は会社財産の範囲で納税義務を負う。弁済不能なら滞納処分のうえ、強制執行を受ける。差し押え可能な資産がないときは「執行停止」となり債権が消滅することもある。 - 減価償却しきれていない資産や在庫はどう扱う?
→ 廃業時点で未償却の資産は、用途に応じて損失計上あるいは売却益などとして処理する。処理を誤ると余計な課税や後日の税務調査リスクにつながるため、帳簿整理や申告方法には注意。
廃業は「事業をやめる」という宣言だけでは完了せず、解散から清算までの手順を踏み、税務申告にも適切に対処しなくてはなりません。具体的な対応方法に悩むことも出てくるかと思われますので、そんなときは税理士にご相談いただければと思います。専門家が対応することで、最後の申告もスムーズに済ませられます。
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M&Aとは
「M&A」と言われても、まだまだ一般的にはよく知られていないのではないでしょうか?テレビや新聞の経済ニュースでは頻繁に目にするようにはなりましたが、まだまだ何のことやらわからない方が多いかと思います。
あるいは言葉の意味は人から聞いたり、本やネット等でなんとなく知っているが、具体的にどういうことなのか知らない人が多数かと思います。それも当然のことです。なぜなら、金融機関やM&Aを手掛けるコンサルティング会社以外の事業会社にとっては、M&Aというのは企業にとっての一大イベントでありますし、むしろほとんどの企業は全く縁のないことも多いからです。したがって、M&Aが一般的に知られるはずもないのです。
そこで、M&Aとは何なのか、またM&Aにはどのような手法があり、具体的にどのようなことなのかを、わかりやすくご説明したいと思います。
M&Aの正式な名称は「Mergers and Acquisitions」であり、M&Aとはこれを略した言葉です。Mergersというのは「合併」、Acquisitionsというのが「買収」のことであり、直訳すると「企業の合併と買収」となります。
一般的に「M&A」と言うと、二つ以上の会社を一つの会社としてくっつける、専門的に言うと複数の法人格を一つの法人格に結合する合併およびある会社の全株式を買い取ってしまう買収といった狭義のM&Aだけでなく、ある企業の特定の事業だけを譲渡する営業譲渡や、資本提携(100%ではない株式の取得・増資の引受)なども含めた、広義の資本的取引のことを包括しています。
MERIT&DEMERIT
M&Aのメリット・デメリット
売り手のメリット・デメリット
1. 従業員の確保
現在、日本の中小企業においては後継者不在により、いつまで事業が続けられるか悩んでいる中小企業経営者が多いです。後継者不在が続いた場合、廃業に追い込まれる企業も少なくないでしょう。そうなってしまうと、従業員やその家族、取引先に大きな影響を及ぼしてしまいます。こうした中小企業がM&Aを行うことで、会社を存続させることができ、ひいては従業員の雇用を守ることができます。
また、M&Aの相手先によっては、その会社のネットワークやノウハウを利用することで、再スタートを切ることができるので、後継者不在に悩んでいる中小企業にとっては、きわめて有効かつ迅速な解決を図るための選択肢となります。
2. 企業体質の強化につながる
M&Aを実行しようという買い手会社は、売り手会社に比べると、資金力、人材などの事業基盤の面で安定した企業となります。
M&Aで事業基盤のしっかりした企業との確固とした関係を築くことができれば、今まで不足していた信用力が補完され、資金調達が楽になることもありますし、また相手先のネットワークを利用することで販路を拡大することができるなど、いわゆる事業シナジーの活用ができ、収益力の強化につながることが期待できます。
3. 売り手の経済的メリット
たとえば後継者が不在のため、自社を廃業・清算する場合、現金や有価証券といった金融資産以外の資産である在庫や機械設備などは換金することが困難なばかりか、往々にして処分費用が嵩み、会社をたたむのに残金が残るどころか、追加での費用の支払いが出てしまう可能性も高いものです。
しかしながら、M&Aを実行する企業にとっては、そういった在庫や機械設備は今後の事業遂行にとって価値となる資産となるばかりか、場合によっては収益力を評価していわゆるのれん価値をつけて株式を買い取ってくれることがあります。
この場合、廃業・清算にかかる手間が、M&Aで軽減されるばかりか、場合によっては手元に残る現金が多くなることもあり、引退後の生活のために大きなメリットとなることでしょう。
もし詳細がお聞きになりたい方は、当社まで、ぜひお問い合わせください。

買い手側のメリット・デメリット
1. 既存事業の拡大や事業の多角化ができる
経済が成熟してくると、既存事業における市場規模の拡大というのは自然には見込めなくなるものです。したがって、自社の事業領域においては、他社の市場シェアを奪うほか売上の拡大が見込めなくなってきますが、これは簡単な話ではありません。
そこで自社の経営戦略やニーズにマッチした企業とのM&Aを実行することによって、自社の事業規模を拡大し、市場シェアを一気に拡大することが可能となります。
また、自社の既存事業の売上が伸び悩んでいる場合は、他の領域への進出、すなわち事業の多角化、新地域への進出という事業戦略を取ることが多いかと思います。しかしながら、ノウハウがない事業に新規に進出する場合は、よほどの事業シナジーがない限り、失敗のリスクが高くなります。そこで、すでにある他業界の会社をM&Aすることで、対象企業の事業ノウハウばかりかすでに獲得しているマーケット・シェアを獲得することができるというメリットがあります。

2. 時間を買うことができる
M&Aを実行することは、自社で一から経営資源である「ヒト・モノ・カネ」を投入して、新しい事業を立ち上げる時間を省くことができ、お金で「時間を買う」ことができるわけです。
3. 失敗のリスクを軽減できる
一般的に自社の既存事業の売上が伸び悩んでいる場合は、他の領域への進出、すなわち事業の多角化、新地域への進出という事業戦略を取ることが多いかと思います。しかしながら、ノウハウがない事業に新規に進出する場合は、よほどの事業シナジーがない限り、失敗のリスクが高くなります。
そこで、すでにある他業界の会社をM&Aすることで、対象企業の事業ノウハウばかりかすでに獲得しているマーケット・シェアを獲得することが できるというメリットがあります。
OFFICE
会社情報
当社は、会計士および税理士のネットワークをベースに設立された会社です。
これまで、多数のM&Aの経験に裏付けられた専門的ノウハウおよびネットワークを元に顧客企業にとって最適なM&Aを実現することが使命であります。
具体的なサービスとして、最も重要なものは、事業承継及び企業規模の拡大を目指している経営者様にとって、最も効果的なM&Aの相手先を見つけ、ご紹介する仲介業務であります。M&A仲介の難しい点は、なんといっても「相手先企業情報の入手及び両者のマッチング」です。
この仲介業務、すなわち出会いがすべてといっても過言ではありません。他社では、どうしても成約ばかりに目を向けて、成約するならどこでもいい、といったことがありますが、当社はこの仲介業務にもっとも力を入れ、またこの仲介において皆様の事業の発展に尽くしていきたいと考えております。
会社名 | 株式会社日本企業評価会計事務所(旧M&Aプロ株式会社) |
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設立 | 平成28年10月5日 |
事業内容 | 企業買収および合併の仲介業務など |
住所 | 〒102-0093 東京都千代田区平河町2-8-10 宮川ビル4階 |
代表取締役 | 近 暁 |