従業員へ廃業を伝えるときの対応|解雇予告手当・未払賃金・退職金についても解説
廃業の事実を従業員に告知するのは心苦しいかもしれませんが、適切な時期に適切な手続きに沿って対応しなければ会社側・従業員側双方に負担が生じるおそれがあります。
法令が絡む問題でもありますし、解雇通知や解雇予告手当、退職金のことなどについても経営者としては理解しておかなくてはなりません。
解雇予告のタイミングは「30日以上前」
廃業に伴い従業員を解雇するときのタイミングについては、労働基準法に基づく次のルールに注意が必要です。
(解雇の予告)
第二十条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
② 前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払った場合においては、その日数を短縮することができる。
このように、原則として解雇日の30日以上前に解雇予告を行う必要があり、これを守らない場合は30日分以上の平均賃金を解雇予告手当として支払わなければなりません。
このルールに準拠する場合、解雇を11月14日に行うなら10月15日までには解雇予告をしなければなりません。10月15日よりあとに解雇の事実を知らせた場合は、30日に満たない日数分の平均賃金を「解雇予告手当」として支払う義務が生じます。
急速に業績が悪化して廃業することになったとしても、基本的にこの要件はなくなりません。ただし、大地震が発生したなどやむを得ない理由によって事業が続けられなくなったケースであれば例外的に解雇予告手当の支払いが免除されることもあります。
早すぎるタイミングで知らせるのも、業務への意欲低下のリスクが高まるなど問題があります。しかし解雇通知のタイミングは従業員の再就職活動にも大いに影響するため、適切な時期を見極めて知らせてあげることが重要です。
解雇予告手当の金額
解雇予告手当の金額は「平均賃金」を基準に計算します。
そしてここでの平均賃金とは、「前3ヶ月間に支払われた賃金総額をその期間の総日数で割った金額」を指します。
※「臨時に支払われた賃金(3ヶ月を超える期間ごとに支払われる、たとえば賞与など)」があるときは、直前3ヶ月の賃金総額から控除する。
例)直前3ヶ月の賃金総額92万円、対象期間の総日数92日の場合
平均賃金は「1万円(=92万円÷92日)」となり、解雇予告が一切なく突然解雇された場合の手当は「30万円(=1万円×30日)」となる。
なお、解雇予告手当は30日に満たなかった日数分に対応して支払い義務が生じます。たとえば解雇日の20日前に予告した場合は、残り10日分の平均賃金を支払えば法的義務を果たしたことになります。
その他注意すべき会社側の対応
解雇時に注意するのは解雇予告のことだけではありません。
法的な紛争が起こらないようにするため、そして従業員の生活を守るためにも、以下の対応を進めていきましょう。
従業員に対する説明を誠実に行う
予告期間があったとしても何の説明もなく突然解雇を告げられたのでは、従業員も納得がいきませんし、賃金のことなど不安も抱えたままになってしまいます。そこで説明会を開くなどして、従業員全員に解雇の理由等が伝わるように情報を共有しましょう。
たとえば、廃業に至った経緯を説明し、経営者として事業継続のために努力してきたことなどを伝えます。また、今まだ振り込まれていない賃金のこと、退職金のこと、解雇予告手当のこと、その他社会保険関連の手続きのことなども丁寧に説明しましょう。
退職金および未払賃金の支払いに対応する
未払賃金が残っている場合、廃業をする局面であってもその支払い義務がなくなるわけではありません。
退職金についても同様です。就業規則等で支払いがあるとの規定が置かれているなら、廃業時であっても支払い義務が生じます。規定がなければ法的な支払い義務はありませんが、退職金相当の一時金を用意すれば従業員が廃業を受け入れやすくなるでしょう。従業員からの反発が大きく法的な問題に発展するおそれがありそうなら退職金相当の支払いをすることも検討すると良いです。
なお、もし会社が倒産状態にあり退職金や未払賃金を支払えない場合、従業員は「未払賃金立替払制度」が利用できます。同制度により一定限度で従業員は賃金を受け取ることができるため、どうしても支払えない状況にあるなら制度利用についてのアナウンスを行いましょう。
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M&Aとは
「M&A」と言われても、まだまだ一般的にはよく知られていないのではないでしょうか?テレビや新聞の経済ニュースでは頻繁に目にするようにはなりましたが、まだまだ何のことやらわからない方が多いかと思います。
あるいは言葉の意味は人から聞いたり、本やネット等でなんとなく知っているが、具体的にどういうことなのか知らない人が多数かと思います。それも当然のことです。なぜなら、金融機関やM&Aを手掛けるコンサルティング会社以外の事業会社にとっては、M&Aというのは企業にとっての一大イベントでありますし、むしろほとんどの企業は全く縁のないことも多いからです。したがって、M&Aが一般的に知られるはずもないのです。
そこで、M&Aとは何なのか、またM&Aにはどのような手法があり、具体的にどのようなことなのかを、わかりやすくご説明したいと思います。
M&Aの正式な名称は「Mergers and Acquisitions」であり、M&Aとはこれを略した言葉です。Mergersというのは「合併」、Acquisitionsというのが「買収」のことであり、直訳すると「企業の合併と買収」となります。
一般的に「M&A」と言うと、二つ以上の会社を一つの会社としてくっつける、専門的に言うと複数の法人格を一つの法人格に結合する合併およびある会社の全株式を買い取ってしまう買収といった狭義のM&Aだけでなく、ある企業の特定の事業だけを譲渡する営業譲渡や、資本提携(100%ではない株式の取得・増資の引受)なども含めた、広義の資本的取引のことを包括しています。
MERIT&DEMERIT
M&Aのメリット・デメリット
売り手のメリット・デメリット
1. 従業員の確保
現在、日本の中小企業においては後継者不在により、いつまで事業が続けられるか悩んでいる中小企業経営者が多いです。後継者不在が続いた場合、廃業に追い込まれる企業も少なくないでしょう。そうなってしまうと、従業員やその家族、取引先に大きな影響を及ぼしてしまいます。こうした中小企業がM&Aを行うことで、会社を存続させることができ、ひいては従業員の雇用を守ることができます。
また、M&Aの相手先によっては、その会社のネットワークやノウハウを利用することで、再スタートを切ることができるので、後継者不在に悩んでいる中小企業にとっては、きわめて有効かつ迅速な解決を図るための選択肢となります。
2. 企業体質の強化につながる
M&Aを実行しようという買い手会社は、売り手会社に比べると、資金力、人材などの事業基盤の面で安定した企業となります。
M&Aで事業基盤のしっかりした企業との確固とした関係を築くことができれば、今まで不足していた信用力が補完され、資金調達が楽になることもありますし、また相手先のネットワークを利用することで販路を拡大することができるなど、いわゆる事業シナジーの活用ができ、収益力の強化につながることが期待できます。
3. 売り手の経済的メリット
たとえば後継者が不在のため、自社を廃業・清算する場合、現金や有価証券といった金融資産以外の資産である在庫や機械設備などは換金することが困難なばかりか、往々にして処分費用が嵩み、会社をたたむのに残金が残るどころか、追加での費用の支払いが出てしまう可能性も高いものです。
しかしながら、M&Aを実行する企業にとっては、そういった在庫や機械設備は今後の事業遂行にとって価値となる資産となるばかりか、場合によっては収益力を評価していわゆるのれん価値をつけて株式を買い取ってくれることがあります。
この場合、廃業・清算にかかる手間が、M&Aで軽減されるばかりか、場合によっては手元に残る現金が多くなることもあり、引退後の生活のために大きなメリットとなることでしょう。
もし詳細がお聞きになりたい方は、当社まで、ぜひお問い合わせください。
買い手側のメリット・デメリット
1. 既存事業の拡大や事業の多角化ができる
経済が成熟してくると、既存事業における市場規模の拡大というのは自然には見込めなくなるものです。したがって、自社の事業領域においては、他社の市場シェアを奪うほか売上の拡大が見込めなくなってきますが、これは簡単な話ではありません。
そこで自社の経営戦略やニーズにマッチした企業とのM&Aを実行することによって、自社の事業規模を拡大し、市場シェアを一気に拡大することが可能となります。
また、自社の既存事業の売上が伸び悩んでいる場合は、他の領域への進出、すなわち事業の多角化、新地域への進出という事業戦略を取ることが多いかと思います。しかしながら、ノウハウがない事業に新規に進出する場合は、よほどの事業シナジーがない限り、失敗のリスクが高くなります。そこで、すでにある他業界の会社をM&Aすることで、対象企業の事業ノウハウばかりかすでに獲得しているマーケット・シェアを獲得することができるというメリットがあります。
2. 時間を買うことができる
M&Aを実行することは、自社で一から経営資源である「ヒト・モノ・カネ」を投入して、新しい事業を立ち上げる時間を省くことができ、お金で「時間を買う」ことができるわけです。
3. 失敗のリスクを軽減できる
一般的に自社の既存事業の売上が伸び悩んでいる場合は、他の領域への進出、すなわち事業の多角化、新地域への進出という事業戦略を取ることが多いかと思います。しかしながら、ノウハウがない事業に新規に進出する場合は、よほどの事業シナジーがない限り、失敗のリスクが高くなります。
そこで、すでにある他業界の会社をM&Aすることで、対象企業の事業ノウハウばかりかすでに獲得しているマーケット・シェアを獲得することが できるというメリットがあります。
OFFICE
会社情報
当社は、会計士および税理士のネットワークをベースに設立された会社です。
これまで、多数のM&Aの経験に裏付けられた専門的ノウハウおよびネットワークを元に顧客企業にとって最適なM&Aを実現することが使命であります。
具体的なサービスとして、最も重要なものは、事業承継及び企業規模の拡大を目指している経営者様にとって、最も効果的なM&Aの相手先を見つけ、ご紹介する仲介業務であります。M&A仲介の難しい点は、なんといっても「相手先企業情報の入手及び両者のマッチング」です。
この仲介業務、すなわち出会いがすべてといっても過言ではありません。他社では、どうしても成約ばかりに目を向けて、成約するならどこでもいい、といったことがありますが、当社はこの仲介業務にもっとも力を入れ、またこの仲介において皆様の事業の発展に尽くしていきたいと考えております。
| 会社名 | 株式会社日本企業評価会計事務所(旧M&Aプロ株式会社) |
|---|---|
| 設立 | 平成28年10月5日 |
| 事業内容 | 企業買収および合併の仲介業務など |
| 住所 | 〒102-0093 東京都千代田区平河町2-8-10 宮川ビル4階 |
| 代表取締役 | 近 暁 |
