廃業には何の費用がいくらかかる?登記や公告のほか未払金も忘れずに
事業をたたむ決断をするときの不安材料の1つに「廃業費用」もあるかと思います。事業内容や各事業者の状況によっても費用は大きく異なるのですが、公的手続きに基づく最低限必要な費用も存在します。
ここで、事業者が廃業の際どんな費用がいくら必要になるのかをご確認いただければと思います。
公的手続きにかかる費用
法人が廃業する際には、解散・清算という法的手続きを経る必要があり、それに伴う登記費用と公告費用が発生します。それぞれ見ていきましょう。
※個人事業主の場合は登記が不要なため廃業届の提出のみで手続き上の費用は発生しない。ただし、青色申告の取りやめ届や消費税の事業廃止届など、状況に応じた各種届出は必要。
登記費用
登記関連では、解散登記に3万円、清算人選任登記に9,000円、清算結了登記に2,000円で合計4万1,000円が登録免許税としてかかります。
これらの費用は、会社の規模や業種の影響を受けません。
なお、解散登記と清算人選任登記に関しては解散決議から2週間以内、清算結了登記に関しては清算手続き完了後2週間以内に申請しなくてはなりません。期限を過ぎると過料が科される可能性があるため注意しましょう。
公告費用
債権者保護のため、官報への解散公告が法律で義務付けられており、その際に掲載料として3万円~4万円程度の費用が発生します。
掲載内容は10行前後となるケースが多く、1行あたり3,000円強の費用がかかることから、3,4万円が目安となります。
また、官報公告後は債権者に2ヶ月以上の債権申出期間を設ける必要があるため、廃業完了までに最低でも2ヶ月以上を要するということも認識しておきましょう。
以上の公告費用および登記費用で7万円~8万円程度の支出が発生します。
専門家への報酬はどの程度見込むべきか
廃業手続きは自力で進めることも可能ですが、登記申請や税務申告には専門知識が求められるため、司法書士や税理士に依頼するケースが多いです。廃業手続きは頻繁に経験するものではありませんし、複雑な手続き、法的要件の理解が難しいものも存在します。特に資金や期間に余裕のない状況下であれば専門家のサポートを受けることが推奨されます。
司法書士への報酬であれば、解散から清算結了までの登記手続き一式で10万円~20万円程度が相場とされています。株主総会議事録などの書類作成も含めて依頼すると費用は加算されますが、その分より全体として円滑な手続きが実現できるでしょう。
税理士を利用する場合は、解散事業年度と清算事業年度の確定申告を含めて、法人の場合10万円~30万円程度、個人事業主では5万円~10万円程度が発生するでしょう。法人だと解散日までの事業年度と清算期間中の事業年度それぞれ確定申告が必要となるため、通常の決算よりも手間がかかります。
なお、以上の専門家費用はあくまで目安であって、各社の事業規模や依頼先で定めている料金体系によっても金額は変わってきます。そのため正式に依頼を行う前に、自社の状況を正確に伝え、費用の見積もりを出してもらうことをおすすめします。
処分費用や原状回復費用
在庫を抱えている場合は処分業者への依頼費用や廃棄費用が必要となることもあります。
セール販売や買取業者への売却で現金化できるケースもありますが、希望する一般的な市場価格で売れない可能性も十分に考えられます。そして売却できない在庫は廃棄するしかなく、産業廃棄物として適正に処理しなくてはなりません。処分費用は在庫の量や種類によって異なりますが、数万円~数十万円かかることも珍しくありません。
設備や機械の処分も同様です。市場価値がある機器は売却益を得られる可能性がありますが、老朽化した機器や機密情報を含む設備は専門業者に処分を依頼する必要があるでしょう。トラック1台分で数万円~の費用がかかり、事業規模が大きい場合は処分費用だけで数百万円に達することもあります。
また、賃貸物件を使用していた場合なら原状回復費用にも留意しましょう。事務所として使っていたのか、飲食店として使っていたのか、用途や面積にもよりますが、坪単価で数万円~数十万円かかることもあります。どのような状態まで戻す必要があるのか、契約書も確認しておきましょう。
未払債務や買掛金にも注意
廃業時点で未払いの債務や買掛金が残っているときはそれらの清算も必要です。
もし債務超過の状態にあるのなら、通常の清算手続きではなく破産手続き等の債務整理が必要かもしれません。その評価のためにも、一度専門家に確認してもらいましょう。
反対に、売掛金の回収や保有資産の売却によって支払い原資を確保できることもあります。未回収の売掛金については取引先に早期回収を依頼し、不動産や有価証券などの資産は換価して現金化しておきましょう。
なお、破産手続きが必要となる場合はまだ特定の債権者に弁済してはいけません。破産手続きの一環で処分する必要があり、一部の債権者にだけ弁済してしまうと違法と評価されるおそれがあります。
KNOWLEDGE
当事務所が提供する基礎知識
-
m&aにおけ...
M&Aをする際に企業にどのくらいの価値がつくかを明確にするためには企業価値査定が必要です。企業価値査定とは、会 […]

-
中小企業がするM...
近年は後継者不足などが社会的な課題にもなっており、中小企業でもM&Aを検討する例が増えています。ただし […]

-
従業員へ廃業を伝える...
廃業の事実を従業員に告知するのは心苦しいかもしれませんが、適切な時期に適切な手続きに沿って対応しなければ会社側 […]

-
既存の資産・事業を換...
法人の資金調達には様々な方法がありますが、その中でもよく使われる方法として「既存の資産や事業を換金する方法」通 […]

-
資金調達ラウンドとは...
スタートアップ企業にとって、資金調達は成長のために必要不可欠です。そこで資金調達ラウンドを意識し、企業の成長段 […]

-
第三者への売却事業承...
日本企業においては、主に従業員や親族などの近しい存在が後継者になる場合が多くあります。そのような慣習にならうと […]

KEYWORD
よく検索されるキーワード
ABOUT
M&Aとは
「M&A」と言われても、まだまだ一般的にはよく知られていないのではないでしょうか?テレビや新聞の経済ニュースでは頻繁に目にするようにはなりましたが、まだまだ何のことやらわからない方が多いかと思います。
あるいは言葉の意味は人から聞いたり、本やネット等でなんとなく知っているが、具体的にどういうことなのか知らない人が多数かと思います。それも当然のことです。なぜなら、金融機関やM&Aを手掛けるコンサルティング会社以外の事業会社にとっては、M&Aというのは企業にとっての一大イベントでありますし、むしろほとんどの企業は全く縁のないことも多いからです。したがって、M&Aが一般的に知られるはずもないのです。
そこで、M&Aとは何なのか、またM&Aにはどのような手法があり、具体的にどのようなことなのかを、わかりやすくご説明したいと思います。
M&Aの正式な名称は「Mergers and Acquisitions」であり、M&Aとはこれを略した言葉です。Mergersというのは「合併」、Acquisitionsというのが「買収」のことであり、直訳すると「企業の合併と買収」となります。
一般的に「M&A」と言うと、二つ以上の会社を一つの会社としてくっつける、専門的に言うと複数の法人格を一つの法人格に結合する合併およびある会社の全株式を買い取ってしまう買収といった狭義のM&Aだけでなく、ある企業の特定の事業だけを譲渡する営業譲渡や、資本提携(100%ではない株式の取得・増資の引受)なども含めた、広義の資本的取引のことを包括しています。
MERIT&DEMERIT
M&Aのメリット・デメリット
売り手のメリット・デメリット
1. 従業員の確保
現在、日本の中小企業においては後継者不在により、いつまで事業が続けられるか悩んでいる中小企業経営者が多いです。後継者不在が続いた場合、廃業に追い込まれる企業も少なくないでしょう。そうなってしまうと、従業員やその家族、取引先に大きな影響を及ぼしてしまいます。こうした中小企業がM&Aを行うことで、会社を存続させることができ、ひいては従業員の雇用を守ることができます。
また、M&Aの相手先によっては、その会社のネットワークやノウハウを利用することで、再スタートを切ることができるので、後継者不在に悩んでいる中小企業にとっては、きわめて有効かつ迅速な解決を図るための選択肢となります。
2. 企業体質の強化につながる
M&Aを実行しようという買い手会社は、売り手会社に比べると、資金力、人材などの事業基盤の面で安定した企業となります。
M&Aで事業基盤のしっかりした企業との確固とした関係を築くことができれば、今まで不足していた信用力が補完され、資金調達が楽になることもありますし、また相手先のネットワークを利用することで販路を拡大することができるなど、いわゆる事業シナジーの活用ができ、収益力の強化につながることが期待できます。
3. 売り手の経済的メリット
たとえば後継者が不在のため、自社を廃業・清算する場合、現金や有価証券といった金融資産以外の資産である在庫や機械設備などは換金することが困難なばかりか、往々にして処分費用が嵩み、会社をたたむのに残金が残るどころか、追加での費用の支払いが出てしまう可能性も高いものです。
しかしながら、M&Aを実行する企業にとっては、そういった在庫や機械設備は今後の事業遂行にとって価値となる資産となるばかりか、場合によっては収益力を評価していわゆるのれん価値をつけて株式を買い取ってくれることがあります。
この場合、廃業・清算にかかる手間が、M&Aで軽減されるばかりか、場合によっては手元に残る現金が多くなることもあり、引退後の生活のために大きなメリットとなることでしょう。
もし詳細がお聞きになりたい方は、当社まで、ぜひお問い合わせください。
買い手側のメリット・デメリット
1. 既存事業の拡大や事業の多角化ができる
経済が成熟してくると、既存事業における市場規模の拡大というのは自然には見込めなくなるものです。したがって、自社の事業領域においては、他社の市場シェアを奪うほか売上の拡大が見込めなくなってきますが、これは簡単な話ではありません。
そこで自社の経営戦略やニーズにマッチした企業とのM&Aを実行することによって、自社の事業規模を拡大し、市場シェアを一気に拡大することが可能となります。
また、自社の既存事業の売上が伸び悩んでいる場合は、他の領域への進出、すなわち事業の多角化、新地域への進出という事業戦略を取ることが多いかと思います。しかしながら、ノウハウがない事業に新規に進出する場合は、よほどの事業シナジーがない限り、失敗のリスクが高くなります。そこで、すでにある他業界の会社をM&Aすることで、対象企業の事業ノウハウばかりかすでに獲得しているマーケット・シェアを獲得することができるというメリットがあります。
2. 時間を買うことができる
M&Aを実行することは、自社で一から経営資源である「ヒト・モノ・カネ」を投入して、新しい事業を立ち上げる時間を省くことができ、お金で「時間を買う」ことができるわけです。
3. 失敗のリスクを軽減できる
一般的に自社の既存事業の売上が伸び悩んでいる場合は、他の領域への進出、すなわち事業の多角化、新地域への進出という事業戦略を取ることが多いかと思います。しかしながら、ノウハウがない事業に新規に進出する場合は、よほどの事業シナジーがない限り、失敗のリスクが高くなります。
そこで、すでにある他業界の会社をM&Aすることで、対象企業の事業ノウハウばかりかすでに獲得しているマーケット・シェアを獲得することが できるというメリットがあります。
OFFICE
会社情報
当社は、会計士および税理士のネットワークをベースに設立された会社です。
これまで、多数のM&Aの経験に裏付けられた専門的ノウハウおよびネットワークを元に顧客企業にとって最適なM&Aを実現することが使命であります。
具体的なサービスとして、最も重要なものは、事業承継及び企業規模の拡大を目指している経営者様にとって、最も効果的なM&Aの相手先を見つけ、ご紹介する仲介業務であります。M&A仲介の難しい点は、なんといっても「相手先企業情報の入手及び両者のマッチング」です。
この仲介業務、すなわち出会いがすべてといっても過言ではありません。他社では、どうしても成約ばかりに目を向けて、成約するならどこでもいい、といったことがありますが、当社はこの仲介業務にもっとも力を入れ、またこの仲介において皆様の事業の発展に尽くしていきたいと考えております。
| 会社名 | 株式会社日本企業評価会計事務所(旧M&Aプロ株式会社) |
|---|---|
| 設立 | 平成28年10月5日 |
| 事業内容 | 企業買収および合併の仲介業務など |
| 住所 | 〒102-0093 東京都千代田区平河町2-8-10 宮川ビル4階 |
| 代表取締役 | 近 暁 |
