【専門家監修】不動産M&Aとは?メリット・デメリット、税金や節税、相場、注意点!【事例あり】

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、不動産業界においてもM&Aを検討する会社が増えています。今回は不動産会社のM&Aの特徴やメリット・デメリット、節税効果や手数料の相場を解説するとともに、不動産M&Aの成功事例・失敗事例をご紹介します。

1.不動産M&Aの特徴

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、テナント料の滞納やテナントの撤退が相次いでいること、不動産の売買市場が停滞していることなどにより、業績不振に陥る不動産会社が増えています。倒産件数も増加傾向にあり、東京商工リサーチの調べでは、2020年9月の不動産会社の倒産件数(負債総額1,000万円以上)は21件(前月比50%増)、負債総額は187億円超に上りました。

コロナウイルスの感染拡大が収束しない限り、今後も不動産業界では業績不振による廃業に追い込まれるケースが増えると見られており、それを回避する手段の1つとしてM&Aを実施する会社が増えるものと考えられます。

(出典)東京商工リサーチ「月次 全国企業倒産状況」
https://www.tsr-net.co.jp/news/status/monthly/202009.html

また、業績の悪化に加え、近年では後継者不在を理由にM&Aを実施する不動産会社も増えています。現在日本には約33万社の不動産会社がありますが、資本金1000万円未満の会社が64%、従業員数10名未満の会社が90%と、その大半は中小規模の会社であり(※)、家族経営の会社も多いため、親族や社内に後継者がいない場合、事業を継続するのが難しくなってしまいがちです。しかし、廃業をすると従業員の解雇、退職金の支払い、事業整理、精算しきれない負債の返済など、さまざまなリスクを伴います。そこで、M&Aによって会社を売却するという選択肢を選ぶ事例が増えているのです。

※出典:経済産業省「不動産業ビジョン2030」P9
https://www.mlit.go.jp/common/001287089.pdf

では、不動産会社を買収する側の企業にはどのような目的があることが多いのでしょうか?

不動産会社には大きく分けて① 不動産保有会社と② 不動産仲介・管理会社の2つがあります。いずれの場合も、M&Aは原則として会社全体(株式、従業員、資産・負債)を対象に行われますが、①の不動産保有会社を対象としたM&Aは、売り手側の会社が保有している不動産の取得を主な目的として行われるケースがほとんどです。

2.不動産M&Aのメリットは?

では、不動産会社のM&Aには、どのようなメリットがあるのでしょうか?事業を売却する側(譲渡側)、買収する側(譲受側)それぞれの立場のメリットを確認しておきましょう。

売却(譲渡)側のメリット

  • 廃業コストがかからない

廃業する場合は従業員への退職金の支払い、事業の整理、事務所の閉鎖、負債の返済など、さまざまなコストがかかります。一方、M&Aの場合は従業員や負債も含めて事業全体を買い手に譲渡できるので廃業コストがかかりません。

  • 節税効果が高い

廃業にあたって会社が保有する不動産を通常取引で売却すると、売却益に対して約33%の法人税が課されます。さらに法人税を差し引いたあとの売却益配当としてオーナーに分配すると、同族会社の場合などは、所得税が追加で課されるケースもあります。一方、M&Aの場合は、不動産を売却するわけではなく、不動産を含めた法人を譲渡することになるので、株式の譲渡益に20%の税金(所得税15%、住民税5%)が課されるのみです。

  • 従業員の雇用を守ることができる

従業員ごと売却先の企業に譲渡することによって、従業員の雇用を守ることができます。また、雇用が継続されるので、従業員に退職金を支払う必要もありません。

  • 円満にリタイアできる

廃業後に精算できなかった負債はオーナーが返済しなくてはならず、返済できない場合は担保にしているオーナーの個人資産(不動産や自動車など)を借金の返済に充てなければなりません。一方、M&Aでは負債ごと事業が引き継がれるので、オーナーは個人として負債を返済する義務を免れ、円満にリタイアすることができます。

買収(譲受)側のメリット

  • 節税効果が高い

通常の売買契約で不動産を取得すると登録免許税、不動産取得税が課されますが、M&Aでは不動産自体を購入するわけではないので、これらの税は課されません。

  • 顧客ごと譲受でき、当該地域にスムーズに参入できる

不動産仲介・管理会社は地域密着型のビジネスを展開しており、長年にわたって培ってきた地元の大家や地主とのネットワークを持っています。M&Aが成功すれば、買い手側はこのネットワークごと売り手側の事業を買収することができるため、当該地域でのビジネスをスムーズに拡大することができます。

  • 通常取引よりも不動産を安く取得できる可能性が高い

売り手側の節税効果を見込んだ上で価格交渉ができるので、不動産のみを購入する場合に比べて安価で取得できる可能性が高くなります。

3.不動産M&Aのデメリットは?

売り手側・買い手側双方に多くのメリットがあるM&Aですが、同時に以下のようなデメリットも指摘されています。

売却(譲渡)側のデメリット

  • 売却先がみつからない場合もある

特に経営状態が悪い会社の場合、売却先がみつからないことがあります。M&A仲介業者に相談する際には、適当な売却先がみつからなかった場合の対処法も合わせて相談できる業者を選びましょう。

  • 契約までに時間がかかる

売却先の候補がみつかっても、調査や条件の調整などに時間がかかり、契約締結に至るまで時間がかかる場合があります。その場合、契約締結まで自力で経営を持続させなくてはなりません。

  • 費用がかかる

親族や従業員に事業を承継する場合は特に費用はかかりませんが、M&Aによって第3者に承継する場合は、仲介業者に手数料として一定の費用(後述)を支払わねばなりません。

買収(譲受)側のデメリット

  • 不動産だけでなく負債も引き継がねばならない

不動産取得が目的のM&Aの場合でも、譲渡会社の事業全体を引き継ぐことになるので、その会社に負債があった場合は、返済義務が生じてしまいます。

  • 旧来の顧客を失う可能性がある

仲介・管理会社をM&Aで買収した場合、旧知の経営者から見知らぬ会社に経営が代わったことに警戒心を抱かれ、管理契約などを打ち切られるおそれがあります。

4.不動産M&Aの手数料の相場は?

不動産会社のM&Aには高度な専門知識やノウハウが求められるため、専門の仲介業者に手続きを依頼して行います。その手数料は業者によって様々ですが、大きく「着手金」「中間金」「月額報酬」「成功報酬」の4つに分けられます。もっとも、すべての業者がこれら4つの費用を設定しているわけではなく、中には「成功報酬」のみで請け負うところもあります。業者と契約を結ぶ際には、どの費用がどのタイミングで、いくらかかるのかをしっかり確認し、納得した上で契約を決めるようにしてください。

なお、手数料は法律などで定められているわけではなく、各業者が自由に決めることができます。手数料の支払いのタイミングとおおよその相場は次のとおりです。

手数料の種類支払のタイミング相場価格
着手金仲介契約締結時100万円~300万円
月額報酬契約締結~クロージングまで毎月一定額を支払う30万円~200万円
中間金基本合意契約時に支払う50万円~200万円
成功報酬最終契約締結後、クロージング時に支払う  原則レーマン方式で算出する

成功報酬は一般的に「レーマン方式」という計算方法で決定されます。レーマン方式では以下のように手数料の割合があらかじめ決まっており、その割合に応じて成功報酬が決められることになります。

⬛レーマン方式における手数料の割合

売却額手数料の割合
5億円以下の部分5%
5億円超10億円以下の部分4%
10億円超50億円以下の部分3%
50億円超100億円以下の部分2%
100億円超の部分1%

手数料の例

M&A仲介業者に依頼し、5か月後に8億円の株式譲渡が成立した場合。着手金は100万円、中間金はなし、月額報酬は50万円/月、成功報酬はレーマン方式で算出する。

着手金:100万円 ×110%(消費税 10%)=110 万円(税込)・・・(a)

・中間金:なし

・月額報酬:50万円✕10か月✕110%(消費税10%)=550万円(税込)・・・(b)

・成功報酬:5億円以下の部分 5億円 ×5%×110%(消費税 10%)=2750 万円(税込)・・・(c)

        5億円超の部分   3億円 ×4%×110%(消費税 10%)=1320万円(税込)・・・(d)     

・手数料総額(a)+(b)+(c)+(d)=4730万円

5.不動産M&Aの成功事例

同業者に売却し、事業を継続できたケース

譲渡会社:
不動産仲介業者A、売上高3億円
社長70歳、社員2人、アルバイト1名
相談内容:
社長が病気療養に専念するため引退を希望しているが、後継者が不在で困っている。M&Aで従業員ごと事業を引き継いでくれる企業を探してほしい。

対応
:会社の利益が出ている場合、事業基盤があり、顧客もいるので、ある程度の価格で買取ってくれる会社が見つかる可能性が高くなります。買い手は、買取り後の追加支払い極端に嫌うため、利益が出ている場合は相場より高くても、売主の希望に近い価格で買収に踏み切るケースがよくあります
また、当社においては、不動産会社の買い手として同業者に優先的に仲介いたしますが、同業の場合、後継者として適切な人材がいる場合も多く、譲渡後に新社長が就任して事業を従来と同様あるいはそれ以上に活かしてくれるというメリットもあります。

6.不動産M&Aの失敗事例

旧経営者が引き続き経営を担ったことが原因で、結局、精算に至ったケース

譲渡会社:
不動産仲介業者B、売上高1億円
社長50歳、社員2人、アルバイト1名
相談内容:
資金繰りが悪化したため廃業を視野に入れているが、もしM&Aで事業を他社に承継できるのであれば、やってみたい。

対応:
当社において不動産会社のM&Aを手がける際は同業を優先して仲介するケースが多いのですが、本件の場合、社長がまだ現役世代だったため、同業への売却を拒否していました。そもそも売却の理由が資金繰りの問題であり、いわゆる事業承継ではなかったため、売却後も社長が経営に携わりたい、という意向が強かったためです。
本件では、他業種の買い手様が興味を示し、新規事業への進出に当たって買収しました。譲渡の際の条件に従い、前社長が顧問となって実質的な経営を行っていましたが、買い手と意見の衝突が増え、買い手としては買収前に考えていたような経営ができず、収益が回復しないまま、再び資金繰りが悪化してしまいました。結果、買い手による追加の資金援助が必要になりましたが、前社長との関係から資金援助は行わず、結局、会社を清算することになってしまいました。
株式を売却する前オーナーが引き続き経営を担うケースは案外多いものですが、その場合、買い手が他業種でも上手くいくM&Aもあれば、買い手が同業だからといって上手くいかないM&Aもあり、結局は人と人の人間関係が重要だと言えます。

まとめ

新型コロナウイルスの影響で市況の悪化が懸念されている不動産業界では、今後、廃業を回避するためにM&Aを検討する事例が増えるものと見られています。不動産のM&Aには買い手だけでなく、売り手にとっても、節税効果がある・後継者問題が解消できるなど、さまざまなメリットがあります。タイミングを逃さず良い買い手を見つけるためにも、1日も早くM&Aの専門家に相談しましょう。